(2022年9月追加)
私のシミュレーションの数式は擬似的なものなので、地球表面の球面らせん軌道の中心軸方向から見ないと大きな誤差が生じる。そのため視線方向を変えて地球のあらゆる方向から自在に眺めることは現状ではできない。しかし、地球表面の球面らせん軌道の中心軸は互いに正反対の方向へ延びている。その一方向から地球の表側を誤差なく眺められるのであれば、逆方向から地球の裏側を誤差なく眺めることもできるはずだ。逆方向から見ると、地球表面の球面らせん軌道の中心軸は、アフリカ大陸中西部のナイジェリアあたりで地表と交わることがわかる。
このシミュレーションでは基底軌道2本と励起軌道1本を描いている。あるいは、励起軌道をこのように2本描いた方が幾分実際のプレート境界を網羅できるかもしれない。
階層球列モデルによるアフリカの地球表面軌道シミュレーションからわかることは、アフリカ大陸(特に西部)の輪郭が地球表面軌道とかなり一致することだ。二本目の励起軌道まで加えれば、アフリカ大陸全体の輪郭をだいたい網羅できる。少なくともアフリカ大陸においては、これらの地球表面軌道は陸地を造る作用を果たしているようだ(ただし大地溝帯は除く)。地球の裏側の太平洋側のシミュレーションと比較してみると対照的だ。シミュレーションの中央部に密集する地球表面軌道は、太平洋側ではむしろ陸地を造らないように作用していると思われる。
日本のフォッサマグナは大地溝帯と呼ばれることがあるが、アフリカにも大地溝帯と呼ばれる地形がある。主にアフリカ大陸を南北に縦断する巨大な谷で、プレート境界の一つである。大地溝帯の谷は、幅35 - 100キロメートル、総延長は7000キロメートルにのぼる。正断層で地面が割れ、落差100メートルを超える急な崖が随所にある。
ウイキペディア:大地溝帯私のシミュレーションと比較すると、アフリカの大地溝帯はおおむね基底軌道2本に対応することがわかる。
アフリカの大地溝帯について調べてみた。諏訪兼位氏の著書「裂ける大地 アフリカ大地溝帯の謎 (講談社選書メチエ)」を参考にした。同書によると、「アフリカ大地溝帯は単なる陥没断層帯ではなく、そこには烈しい上昇運動があり、烈しい火山活動があり、浅発地震が集中し、地下からの地熱流量も高い」とのことだ。たとえばエチオピアでは大地溝帯の形成に伴って2100mを超える地面の上昇があったそうだ。日本のフォッサマグナと同様の大規模な隆起だ。
諏訪氏は大地溝帯を造った力について考察している。その概要はほぼこの論文の通りだ。
地質学には「雁行断層」という概念があるそうだ。「いくつかの断層面がある幾何学的な配列をしている時、そのパターンを、断層面と水平面とのなす交線が示すパターンで表現することができる。第2図の左に示されるふたつのパターンを、雁行構造とよぶ。ここで、雁行構造の各要素をエレメント(element)、それらの集合のなす形態の延びの方向をロウ(row)とよぶ」と諏訪氏は言う。
また、第2図の右に示されるように、「ロウが連続的な曲線である時、ロウとエレメントが、ある一定の角度をなすか、もしくは両者のなす角が、その曲線に沿って連続的に変化する構造を、雁行構造とよぶ」と諏訪氏は言う。アフリカ大地溝帯は雁行構造になっていると諏訪氏は指摘する。
この第2図はそのまま階層球列の説明に使えそうだ。「軌道上に球列が存在するとき、それぞれの球体の中心軸の方向を表した図」と説明を変えても問題なさそうだ。右図は軌道が湾曲している場合だ。左図は軌道が2本並んでいる場合だが、次のように読み替えて別の状況を当てはめることもできる。本当は軌道は1本しかなく、2本の軌道のちょうど真ん中を通っていると想像する。この1本の軌道を祖球表面軌道(アフリカ大地溝帯の場合正確には祖球表面軌道が地球の表面に造る軌道)と考え、この軌道を親球列が移動していると仮定する。各親球の親球表面軌道には子球列が存在するが、祖球表面軌道から一番離れた地点に位置する子球だけに注目し、その他の子球は無視する。言わば各親球ごとに、祖球表面軌道の左右に1個ずつ子球が存在する状況だ。これらの子球の速度ベクトルを描くと、この雁行図のようになる。子球は親球表面軌道を軌道公転しており、祖球表面軌道の左右で移動方向が異なるからだ。祖球表面軌道から一番離れた地点に子球が位置した瞬間にその子球が磁気リコネクションを起こすと仮定すれば、祖球表面軌道の左右の2本の軌道は親球列が生成した断層を表すことになる。実際の状況はもっと複雑なはずだが、雁行断層の基本原理はこのようなものと思われる。
前書によると「大洋中央海嶺はほとんど例外なく雁行配列しており、雁行の要素が食い違う部分にはトランスフォーム断層がみられる」そうだ。親球と親球の境界でトランスフォーム断層が発生するのかもしれない。また、祖球表面軌道の左の子球と右の子球をそれぞれ「火山フロント」「地震の震源」に見立てたり、「高温低圧型磁気リコネクション」「低温高圧型磁気リコネクション」に見立てたりすることもできるだろう。ただし、これらの役割はポテンシャル分布によって変化する。蛇足ながら付け加えておくと、前項で出てきた諏訪湖も雁行断層である。
また、前書によると、アフリカ大地溝帯の雁行構造にはいくつもの次数があるという。「第二次の雁行構造は、第一次のエレメントをロウとする……第三次の雁行構造は、第二次のエレメントをロウとする……第四次の雁行構造は、第三次のエレメントをロウとする……」と続く。どこまで続くかというと、「露頭観察によって判読できるものが第六次(数メートル)および第七次(数センチ)の雁行構造である」そうだ。私なら球列に階層があると表現するところだ。
前記の論文の第V章で、矢入氏はアフリ力大地溝帯の雁行断層系の地殻の伸長方向を分析している。アフリカ大地溝帯の西側の分岐である西部地溝は、ビクトリア湖の西を南北に走り、北からアルバート湖地溝、タンガニーカ湖地溝、ルクワ湖地溝などで構成される。これら個々の地溝の地殻伸長方向は同じでなく、「南部に行く程伸長方向は少しずつ左回りに回転」しているという。「もし、西部地溝をはさむ東西の両地殻が剛体としての挙動をし、地溝を含む破壊領域中でひずみが一様に分布しているとすれば、……回転の中心は一点に集まるはずである。しかし結果はそうではない」と矢入氏は述べている。これは、親球が「自転」しながら祖球表面軌道を移動するからだと簡単に説明できる。
アフリカ大地溝帯には実に奇妙な火山オルドイニョ・レンガイがある。
ウイキペディア:オルドイニョ・レンガイオルドイニョ・レンガイはカーボナタイト (火成炭酸塩岩) を噴出する地球上で唯一の活火山である。特にこの山の溶岩はナトロカーボナタイトと呼ばれ、溶岩の温度は510℃しかない。世界中のほとんどの溶岩はケイ酸塩鉱物が豊富なのに対し、オルドイニョ・レンガイの溶岩は希少なナトリウムとカリウムの炭酸塩鉱物が豊富である。このカーボナタイトの成因はいまだ未解明だ。
火成炭酸塩岩という単語に私は注目する。カーボナタイトの成因は以前説明したコンクリーションと似ているのではないか。カーボナタイトにはナトリウムとカリウムが、コンクリーションにはカルシウムが含まれている。イオン化傾向が大きく、通常の条件では水溶液から析出しにくいこれらの金属が、磁気リコネクションで発生する電荷によって炭酸塩鉱物として析出するのではなかろうか。低温高圧型磁気リコネクションが起きていると考えたい。
オルドイニョ・レンガイ火山はその外観も特異だ。2011年の写真からは、山頂火口の全体がほぼ円形で椀状になっていることがわかる。ほぼ円形ではあるが、正確には円形でなく多角形に見えるところが面白い。
2010年10月の写真では、数本のホルニト(溶岩が固まった尖塔)が火口を取り囲んでいる。ホルニトの分布と、外輪山のような山頂の輪郭とを合成すると、球面らせん軌道の下半分の形になるのではあるまいか。ひときわ巨大なホルニトは、アルファベットl字型軌道の先端に位置するようだ。シミュレーションでは黄色い球体に相当する。この黄色い球体のすぐ隣には桃色や水色の球体があるはずだが、これらが作ったホルニトはすでに崩壊しているようだ。
また、アフリカはダイヤモンドの産地として有名だが、その母岩となるキンバレー岩の成因はカーボナタイトと関係が深いことが知られている。地下深くで造られるはずのダイヤモンドが地表に存在することが地質学上の謎だと前々項で説明したが、その謎もやはり地表近くで磁気リコネクションが起きることが原因なのだろう。