気象学で地球規模の大気循環について学ぶ学生は、最初に子午面循環について理解しなければならない。地球は太陽から光によって熱を受けるが、その光は極よりも赤道のほうが多い。したがって赤道地方は高温になり上昇気流が発生し、上空では暖かい空気が赤道から極に向かって対流することになる。これが子午面循環だ。
ウイキペディア:大気循環
子午面循環には、低緯度のハドレー循環・中緯度のフェレル循環・高緯度の極循環という3種類がある。基本となるハドレー循環は恒常的に存在する力強い循環だ。極循環は弱いがハドレー循環と同じく閉じられた大気の渦として恒常的に存在する。しかしフェレル循環は時によって存在したり消えたりするような見かけの循環だ。
そもそも、フェレル循環には何か熱力学の法則と矛盾するものがありそうな気がする。「理論的には、赤道付近に低圧帯、極付近に高圧帯があり、赤道で温められて上昇した空気が極付近で下降する、という単純な循環によって熱の不均衡は解消されるように思えるが、実際の地球の大気はそのような単純な循環構造とはなっておらず、始めに述べたような気圧帯(緯度30度付近の中緯度高圧帯・緯度60度付近の高緯度低圧帯)が発生している。この気圧帯によって引き起こされる気圧の不均衡が、フェレル循環を発生させる」らしい。
フェレル循環によって、貿易風とは正反対の向きの風が中緯度に発生する。これは偏西風と呼ばれている。偏西風はフェレル循環と極循環の境界付近で最も強くなり、ジェット気流と呼ばれる強い西風となる。偏西風は日本付近の天候を西から東に変える原動力でもある。赤道と極の温度差が大きくなると南北気圧差が大きくなって傾圧不安定な状態になり、偏西風は南北に蛇行するようになる。この蛇行を偏西風波動という。
ウイキペディア:偏西風偏西風は高度とともに強くなり対流圏界面付近で風速が最大となる。そして特に風速の強い狭い区域、すなわちジェット気流とよばれる帯を形成する。気流の流れを軸とすると、軸の中心に近いほど風速が速く、どこでも平均的な普通の風とは異なるのが特徴だ。成層圏などにも存在するが、単に「ジェット気流」という場合は対流圏偏西風のものを指す。主要なジェット気流には北緯40度付近の寒帯ジェット気流と北緯30度付近の亜熱帯ジェット気流がある。長さ数千km、厚さ数km、幅100km程度で、特に冬季には寒帯前線ジェット気流と亜熱帯ジェット気流が日本付近で合流し、風速は100m/s近くに達することもある。
ウイキペディア:ジェット気流
以上、大急ぎでジェット気流について説明してみた。これで役者がそろった。階層球列とジェット気流との関係を語ることが可能になった。普通の気象学では大気循環が存在し、その結果としてジェット気流が生まれる。しかし私は、大気循環と親球列の両方の作用の結果としてジェット気流が生まれると考えたい。ジェット気流は普通の風とは違い、軸の中心に近いほど風速が速い。そんな風が特別な理由なく吹くはずがない。
ジェット気流は長さ数千km、厚さ数km、幅100km程度と、幅に比べて厚さが薄い。これを階層球列モデルに当てはめてみると、地震の項で見た「親球の空間軌跡と地表との断面」に似ているのではなかろうか。地球表面の球面らせん軌道の両側に正弦曲線を描いたような形だ。
ジェット気流の経路は夏季と冬季とで大きく違い、この図のように分布している。
ことバンク:ジェット気流大まかに見て、夏季のジェット気流の形を原点対称に組み合わせれば冬季のジェット気流の形になる気がする。ほぼ同形の地球表面2軌道が同軸回転しており、半年ごとに重なったり逆向きになったりを繰り返しているのではないかと疑われる。しかし、どうやらそうではないらしい。以前2018年3月の高層天気図をシミュレーションしたが、地球表面2軌道の角度が冬季の偏西風と同じくほぼ向かい合わせになっていた。ということは、地球表面2軌道は同軸回転せず決まった位置に固定されていることになる。だとすると、大まかには3月の高層天気図のシミュレーションが夏季や冬季の偏西風にも適用できるだろう。地球表面2軌道は、親球列のポテンシャルの経時変化によって風が強くなったり弱くなったりを繰り返していると思われる。夏季には赤の軌道はポテンシャルが低いので風が吹かず見えないだけなのだろう。
3月の高層天気図を偏西風に描き直してみた。まず、青の軌道を初期位相0度・90度・180度・270度の4本の軌道で表現してみた。ただし位相0度と位相180度は蛇行の中心線を表すので同じ軌道(黄色)になる。3月の高層天気図と同じく親球列のポテンシャル分布を表すために5次元超球面の3次元断面の式を使った。厳密なシミュレーションではないので参考程度に見てほしい。
すべての色の軌道が反時計回りの風をもたらすと考える。ただし子球のポテンシャルが一様でないので、同じ軌道でも場所によって風の強さに強弱がある。したがってこのシミュレーションに表示されていても風があまり吹いていない部分も存在する。
なお、偏西風が吹く高度は範囲が狭いので、軌道を表示する高度はかなり限定している。
実のところ、夏季の偏西風を表現するためには4本の軌道は必要でなく、黄色と水色の2本だけでほぼ十分かもしれない。取りうるすべての親球位相の半分を選んだことになる。この偏りが「偏西風の蛇行」を表すと考える。いわば「親球位相0度」と「親球位相90度」の波形を描いたことになる。太陽のバタフライダイアグラムで「親球表面2軌道が太陽表面に作る磁場の位相は互いに90度ずれている」と仮定したのと同じような状況だ。
ポテンシャルの経時変化により、夏季には風が吹いていなかった軌道にも冬季は風が吹く。この軌道を緑と肌色で表し描き加えた。元の高層天気図の赤の軌道を赤で着色するとかえって見にくくなるので、赤の代わりに灰色で表示した画像を右に並置する。
偏西風が取りうる軌道をすべて表示してみた。親球列のポテンシャルの初期位相によって、偏西風はこれらの軌道から任意の蛇行経路を選ぶことになると思われる。もっとも、一時的あるいは局地的には親球や子球の励起によってこれよりも激しい蛇行が見られるだろう。これらの軌道は「親球の空間軌跡と地表との断面」に形が似ている。しかし正確には「親球の空間軌跡と対流圏界面との断面」とでも呼ぶべきだろうか。
なお、ジェット気流図を見ると夏季には赤道付近に偏東風ジェット気流がある。偏東風ジェット気流は西向きの風だから、寒帯前線ジェット気流や亜熱帯ジェット気流とは方向が逆向きだ。逆向きなのでシミュレーションには表示していない。偏東風ジェット気流は地球表面軌道に沿って吹くというより、赤道に沿って吹くようだ。夏季は日照によって赤道地方の水蒸気量が増えるため、赤道付近では偏東風ジェット気流による東風がジェット気流による西風よりも相対的に強く吹くのだろう。
偏西風はしばしば日本列島に豪雨をもたらす。日本気象協会の衛星画像をご覧いただきたい。この日新潟県で一時間に約100ミリの猛烈な雨が降った。この降雨帯もどうやら「二重らせんで編んだ二重らせん」の形をしているようだ。
日本気象協会このとき大陸の偏西風による雲は特徴のある形を描いていた。一般的にはこの状況は単純に偏西風の蛇行と理解されている。
左は豪雨と同時刻の画像だ。新潟あたりから西へ朝鮮半島を横切って細い雲が伸びている。この雲(シーラスストリーク)の形は正弦曲線に見える。それも1本だけではなく、波長が同じで位相が違う正弦曲線が2本ないし4本並走しているように見える。大まかに見ると二重らせん、細かく見ると二重らせんで編んだ二重らせんと思われる。しかしこれらの軌道の南に位置する雲塊(トランスバースライン)の形はこの画像では明瞭ではない。
右は4時間後の画像だが、この短時間では偏西風の軌道の位置はそれほど変わらない。しかし、南の雲塊の形はかなりはっきりしている。近畿・四国から西へ九州を超えて雲が伸びている。この南の雲も二重らせんになっており、鎖状の降雨帯の形から判断すると二重らせんで編んだ二重らせんの形をしているようだ。つまり、西日本から朝鮮半島の上空には、二重らせんで編んだ二重らせんの形をした雲が2組南北に並んで分布していると思われる。この区域に8本の細いらせん状の偏西風軌道が集合していることになる。子球の表面2軌道が見えているのだろう。
別々の2本のらせん軌道が対馬海峡付近で重なり、東西方向に鎖状の降雨帯を作っている。だとすると、新潟県の豪雨帯も8本の細い偏西風軌道のうち2本が重なった場所にできていると思われる。日本列島の豪雨は往々にしてジェット気流の蛇行によって引き起こされるが、2本の軌道の交差による磁気リコネクションが大きな理由になっているようだ。
ジェット気流が吹く理由を階層球列モデルで考えてみたい。以前日本列島の地震分布について考察したのを覚えておられるだろうか。九州の南の海に巨大な同心円状の親球があった。この親球の赤道で小規模な地震が多数起きていた。高層天気図に見られる低気圧や高気圧を親球と考えれば、ジェット気流も同じような状況と思われる。ただし、地震の原因となる親球は地下約30qに中心があったが、偏西風の原因となる親球は上空10qあたりに中心がある。属する地球表面軌道の中心軸の方向も違う。偏西風の原因となる親球の効果は上空10qあたりに集中する。
親球表面軌道には子球列が存在し、それぞれの子球はその場所で小規模な風を起こすとする。この風はさまざまな方向を向く。ところで、親球は地球表面軌道に沿って軌道公転している。したがって個々の子球も地球表面軌道に沿って高速移動している。その結果、子球が発生させる風の向きには地球表面軌道に沿う成分が強く加わる。また、子球は親球表面軌道を軌道公転している。その結果、子球が発生させる風の向きには親球表面軌道に沿う成分も加わる。したがって最終的に子球が発生させる風は、大まかには地球表面軌道に沿うが局所的にはあちこちの方向を向く乱気流となる。ジェット気流は風速が非常に大きいが、軸に直角の方向の風速の変化も非常に大きいことが知られている。
ジェット気流の厚さが横幅に比べてなぜ薄いかを考えてみたい。九州南海の親球の地震分布から推測すると、磁気リコネクションは親球赤道付近だけで起きる。同じように、偏西風帯でも親球の中心が存在する高さ10qあたりでだけ磁気リコネクションが起き、空気の温度が上がると考えられる。その結果ジェット気流は横幅に比べて厚さが薄くなるのではなかろうか。偏西風の成因は、高緯度と低緯度の温度差によって生じる気圧差(上空ほど著しい)と、地球回転の影響(コリオリ力)だと気象学では考えられている。コリオリ力についてはどうもつじつま合わせ的な印象を私は受ける。だがそれはともかく、偏西風の成因は南北の温度差と考えられているわけだ。それならば南側の気団の温度が高いほどジェット気流は強く吹くことになる。ウイキペディアの図によると、ジェット気流は南側の暖かい気団の北端にある。南側の気団に重なった子球で磁気リコネクションが起き、空気の温度が上がるとジェット気流が強くなるのではなかろうか。
なお、この薄い領域の磁気リコネクションで発生した電荷は、ジェット気流に沿ってシーラスストリークやトランスバースラインなどの雲を発生させる要因になると思われる。
言い遅れたが、ジェット気流を地震と同じモデルで説明するとしたら、空中の階層球列にも地下の階層球列と同じように祖球の階層を導入する必要がある。地球表面軌道には祖球列が存在し、祖球表面軌道には親球が存在すると考えねばならない。ただし祖球の存在があらわになるのは祖球が励起したときだけだ。祖球が最低準位のとき、親球は鉛直で地球表面軌道にほぼ一直線に並んでいるように見えるだろう。祖球が励起すると、祖球の自転軸は地球表面軌道に沿い、親球の自転軸は祖球の表面軌道に沿うような関係になるだろう。祖球表面軌道が鉛直でない場所では親球は鉛直ではない。ただしそのような場所では磁気リコネクションは弱い。祖球が励起すると、地球表面軌道に並行して左右に上向きの親球列と下向きの親球列が並ぶ。その片方では特に磁気リコネクションが強くなる。つまり、偏西風の蛇行の原因のひとつは祖球の励起ということになる。
こうなると階層の定義は残念ながら一筋縄ではいかなくなる。祖球に相当するような現在あらわでない階層が、階層球列の他の階層にも含まれているかもしれない。太陽と地球の階層球列に今一つ統一感がないのはこれが原因ではなかろうか。