空中に孫球が存在すると、球面らせん軌道あるいは超球面らせん軌道に沿って移動するひ孫球列が上昇気流と下降気流を発生させ、積乱雲ができやすくなる。その機構をもっと複雑にしたのがスーパーセルと思われる。スーパーセルとは、回転する継続的な上昇気流域(メソサイクロン)を伴った、単一積乱雲で構成される非常に激しい嵐(雷雲群)だ。メソサイクロンは「超球面らせんの内管」と推測される。
スーパーセルは持続時間が平均数時間と長く、雲頂高度が上空20 kmを上回ることさえある。自ら低気圧のように回転している。大量の雹、激しい雨(集中豪雨)、強いダウンバースト、雷、そして時に竜巻を発生させる。
ウイキペディア:スーパーセル
積乱雲が励起してスーパーセルになる瞬間の動画をご覧いただきたい。このスーパーセルはn=1に励起した孫球と思われる。励起した積乱雲と同じく超球面らせんの式で表される。スーパーセルとなった孫球の半分は地下にある。
動画の冒頭ではこの雲はスーパーセルではなく、n=0のただの積乱雲だ。10秒あたりからスーパーセルに変化し、幅は広がるが背が低くなる。背が低くなるのは当たり前で、n=1の図形の高さは数学的にn=0の図形の高さの半分しかない。
この動画のスーパーセルをかなとこ雲と同じ要領でシミュレーションしてみた。表示範囲を超球面らせんの内管の上半分に限定した。
本当にこれがスーパーセルなのか、最初から最後までただの積乱雲あるいはかなとこ雲ではないかという疑問もあるが、次の例を見てもスーパーセルが往々にしてn=1に励起した孫球の内管であることは間違いないと思われる。
WIRED:まるで生き物のようにうごめく超巨大積乱雲「スーパーセル」、その美しくも荘厳な姿宇宙からスーパーセルの頭頂部を撮影すると孫球表面軌道の形がわかることがある。この写真のスーパーセルの頭頂部は球面の方程式で表せるようだ。n=0の軌道とn=1の軌道が共存している可能性もある。隣にシミュレーションを並置した。
NASA earth observatory:Storms Belowこの写真ではスーパーセルの雲底に円形の模様が並んでいる。ひ孫球列と思われる。ただし、スーパーセルによってはこの模様は円形でなく不規則な形をしている。ひ孫球が励起して超球面らせん形になったのだろう。
地球の記録:世界中が熱波に覆われていたかのような感覚さえ覚える2018年8月初旬のスーパーセルとマイクロバースト
スーパーセルが発生するときには地上で南風、中層で南西風、上層で西風というような風向きの規則的な変化がある。この状態を「水平方向の風に鉛直シアーがある」と気象学では表現する。スーパーセルが孫球であるのなら、たとえば孫球表面軌道に沿って風向きが変化すると考えれば、風に鉛直シアーがあっても不思議はない。
実際の機構はもっと複雑だろうが、スーパーセル内部の気流を単純化してシミュレーションしてみた。赤が上昇流、青が下降流だ。赤はスーパーセルの内側、青はスーパーセルの外側で気流が強くなっていると考えてほしい。このような内部気流を持つスーパーセルが外部の風と接続していると思われる。
このシミュレーションでは半径と回転数の違う2種類のn=1の孫球の表面軌道が重なっている。このシミュレーションが正しいかどうかは不明だが、少なくとも、スーパーセルには2軌道が存在することが推測できる。それがスーパーセルと積乱雲の大きな違いと思われる。
積乱雲やスーパーセルは激しい集中豪雨を降らせる。私の想像だが、何か特殊な機構がなければこの動画のように局地的で強烈な雨を降らせたりはしないのではなかろうか。
YouTube:Tsunami from Heaven / Amazing Rainstorm Timelapse / Downburst / Microburst読者はスベンスマルク効果という言葉を聞いたことがあるだろうか。宇宙空間から飛来する銀河宇宙線が地球の雲の形成を誘起しているという仮説だ。この仮説はいまだ実験では確認されていない。だが、空気中において宇宙線によって放出された電子が雲の核形成の触媒として作用することが2005年の実験で明らかとなった。スベンスマルク効果の真否は別にして、この実験は電子が雨を降らせる要因となることを証明したと解釈できるのではなかろうか。
ウイキペディア:スベンスマルク効果私の妄想だが、空気中で電子が生成すれば雲ができるのであれば、ひ孫球の磁気リコネクションによって電荷が生成されても雲ができるのではなかろうか。電荷が雲粒を作り出し、急速に雨粒に成長しているのではなかろうか。
積乱雲(というより高積雲?)の頭頂部で、局所的な降雨が発生している写真がある。
amazon:驚くべき雲の科学いきなり通販サイトの写真集のページを引用したが、表紙の写真に注目してほしい。列になった薄い雲のそれぞれから大量の降雨が発生している。実際には降雨というよりも、水滴が凍結してできた尾流雲というほうが正確だ。こんな薄い雲から大量の水滴が発生するのは不思議ではなかろうか。しかも、拡大してみると雲の形がアスタリスク形(*の形)になっている。何かの原因がなければ雲の形がこれほど幾何学的になるとは考えられない。シミュレーションするとこんな形だ。
この写真は孫球頭頂部で磁気リコネクションが発生するという現場写真になっていると思う。この写真集にはさまざまな珍しい雲の写真が収められているが、その中では地味で人目を惹かないこの写真を表紙に据えたことに著者の見識を感じる。
集中豪雨の機構を考えてみたい。数時間にわたって強い雨が続く集中豪雨をもたらしうるのは、「積乱雲が世代交代するマルチセル型雷雨」や「スーパーセル型雷雨」だ。ひとつひとつの積乱雲を降水セルと呼ぶと、マルチセル型雷雨では降水セルが線状あるいは団塊状にまとまり、スーパーセル型雷雨では単一の巨大な降水セル(スーパーセル)が存在する。
ウイキペディア:集中豪雨日本で発生するマルチセル型雷雨にはバックビルディング型が多い。「バックビルディング型とは、成長期・成熟期・衰退期など異なるステージの複数の降水セル(積乱雲)が線状に並びつつ一般風の方向に移動しており、成熟期や衰退期のセルからの冷気外出流により移動方向とは反対の風上方向に新たなセル(積乱雲)が生まれるタイプのもの」らしい。
このサイトのバックビルディング現象の解説図はわかりやすい。2方向の風が交わる場所でバックビルディング現象が発生している。
産経新聞:積乱雲の連続発生 「バックビルディング現象」を確認 防科研写真集「驚くべき雲の科学」の表紙の雲の列は、バックビルディング型の線状降水帯の機構を推測するのに適している。これらの積乱雲は2列になっている。子球表面軌道が並行しているのだろう。角度から考えてこの2列は画像の奥で交差すると推測される。この交差点でそれぞれの軌道の孫球が重なる。そしてふたつの孫球のポテンシャル差をエネルギーにして孫球頭頂部で磁気リコネクションが発生し、電荷が生成する。もしくは孫球が重なった場所に積乱雲そのものが生成する。その結果、孫球列の軌道公転に伴って2列の交差点で次々と積乱雲が発生し、断続的に地上に雨が降る。
スーパーセル型雷雨の発生も子球表面軌道の交差が原因になっていることが多いらしい。積乱雲が線状に並んだ状態をマルチセル・ラインと呼ぶと、スーパーセルが「マルチセル・ラインからできる場合は、この長寿命の嵐が、一般風に従った向きから分裂に伴って方向転換をするところから始まる。水平方向の一般風に鉛直シアーがあるときに分裂しやすく、右側に逸れる"right-movers"(ライトムーバー)、左側に逸れる"left-movers"(レフトムーバー)に分裂する。このとき、ライトムーバーは下降気流が強まって弱体化する一方、レフトムーバーは上昇気流が強まってスーパーセルになる」そうだ。
ウイキペディア:スーパーセル要するに2列の子球表面軌道が交差しており、そのうち1列は積乱雲が並びマルチセル・ラインとして見えている。2列の交差点で孫球が合体分裂して方向転換するように見え、その後スーパーセルになるのだろう。なお、スーパーセルが発生するときにはたいてい上空に偏西風が強く吹いている。偏西風には何かしら「スーパーセルの素」が存在するのかもしれない。
線状降水帯についてはウイキペディアに解説があるが、2番目の説明動画の九州北部豪雨は、重なった親球の表面軌道が逆向きに同軸回転しているように見える。
ウイキペディア:線状降水帯