●高層天気図で見る低気圧と高気圧

子球に重なっている低気圧があるとしたら、その低気圧は特殊なものなのかという疑問がわく。しかしこの低気圧はごく普通の温帯低気圧のようだ。日本人なら誰でも知っている通り、温帯低気圧と移動性高気圧は大陸から偏西風に乗って交互に日本にやってくる。

それでは温帯低気圧とはいったいどんなものなのだろうか。温帯低気圧が形成されるモデルの代表的な例としてノルウェー学派モデル(ビヤークネスモデル)がある。しかしノルウェー学派は実際の低気圧の発生過程を説明することはできなかった。その後1940年代後半に前線の南北の温度差が大きいと地上と上空の風速の差(鉛直シア)が大きくなって不安定となり、南北への気流の蛇行が起こることが発見された。このようにして生じる気流の南北への波動を傾圧不安定波という。現在では上空の偏西風に発生した傾圧不安定波が地上の前線と相互作用して低気圧が発生すると考えられている。

ウイキペディア:温帯低気圧

極を中心に中緯度帯の上空を一周する偏西風は、南北に蛇行して流れ、波動の性質をもつ。この蛇行を偏西風波動という。偏西風波動は傾圧不安定の表れだから、温帯低気圧の成因を探るには偏西風波動の性質を調べればよい。偏西風波動には、波長が1万キロメートル前後の超長波、3000〜8000キロメートル程度の長波、3000キロメートル程度以下の短波があり、それぞれ成因もふるまいも異なる。

ことバンク:偏西風

気象学によると、偏西風波動は渦位保存則(角運動量の保存を意味する)を満たすために偏西風の蛇行をもたらすと考えられている。渦度やコリオリの力を重視しており、当然ながら地球表面軌道や親球の存在は仮定されていない。そのため現在でも偏西風の蛇行は予測できない。つまり、温帯低気圧が発生する原因はいまだ明らかではない。


偏西風波動には短波と長波が重なり合って存在し、長波一つの中に複数の短波が乗っているように見える。大規模な低気圧や高気圧による偏西風の蛇行が長波に相当し、その上を列になって移動する小さな蛇行が短波に相当する。大陸から日本にやってくる温帯低気圧や移動性高気圧は3000キロメートル程度以下の短波に相当する。短波は長波の蛇行に沿って西から東へ比較的速く移動する。地上の温帯低気圧や移動性高気圧の移動は、この動きと連動している。

どうやら低気圧や高気圧には階層があるらしい。温帯低気圧が子球だとしたら、親球に相当するもっと大きな低気圧や高気圧があるようだ。気象学では親球はロスビー波という偏西風波動として認識されている。偏西風帯の主として対流圏中層より高いところに卓越する長波だ。東西方向の波長は普通数千km以上で,上層の半球等圧面天気図上では、地球を取り巻いて波の数が 5〜6程度のロスビー波がみられる。

ことバンク:ロスビー波

北半球の高層天気図を用いて長波に該当する低気圧と高気圧の分布を見てみよう。一般に、地上天気図ではその地点の気圧を表記し、同じ気圧の地点を結んだ等圧線を記述する。しかし、高層天気図では特定気圧の高度が同じ地点を結んだ等高度線を記述する。500hPaは対流圏中層を代表する層で、高層気象図の代表格だ。高度約5700mに相当し、主に対流圏中層の移流や気圧の谷、峰を解析できる。

ウイキペディア:高層天気図

画像をご覧いただきたい。「2018年3月」と「1981〜2010年の平均値」の500hPa高度の高層天気図を比較したときの偏差を橙色と水色で表したものだ。橙色は平年よりも高気圧の場所、水色は平年よりも低気圧の場所を示す。地球を取り巻いて一周あたりの波の数が 5〜6程度の偏差がみられる。この図は500hPa高度の傾圧不安定波を意味している。上空の偏西風に発生した傾圧不安定波が高度5700mにまで降りてきたものと言ってもいい。元データは気象庁だが、図に簡単な説明が入っているのでこのサイトの図を使わせていただいた。

農業温暖化ネット:3月から初夏の陽気(あぜみち気象散歩67) 
500hPa高層天気図   500hPaシミュレーション

隣に私のシミュレーションを並置した。「高気圧の軌道」と「低気圧の軌道」とが存在するのがわかる。地球上空には球面らせん2軌道が存在するらしい。それぞれの軌道の中心軸は地球の自転軸と一致し、北極点を挟んで互いに向かい合っている。2軌道にはそれぞれ親球列が存在し、気団を形成する。気団の強さは個々の親球のポテンシャルによって決まる。球面らせん軌道を軌道公転する5次元超球面の3次元断面の式を使った。といっても本当の5次元を表しているのではなく、親球列のポテンシャル分布が変化することを示している。この高層天気図は一か月平均の偏差を表しているから、親球が一か月間移動したときの軌跡を描いたことになる。2軌道の位置は一年中変化しないが、ポテンシャルを変化させながら親球が移動することによって気団が移動する仕組みらしい。

この親球の表面軌道を子球列が軌道公転する。子球のポテンシャルは親球の赤道で強いから、親球の赤道付近でだけ子球が形成する気団が観測される。その高度で親球の周縁部を子球が移動するように見える。そして子球に重なった小さな気団が温帯低気圧や移動性高気圧の原因になる。親球列が東へと軌道公転することで、温帯低気圧と移動性高気圧が大陸から日本へ移動する。

すでにお気づきと思うが、プレートテクトニクスでシミュレーションした地球内部の祖球列の軌道とは状況が全く違っている。この高層天気図の球面らせん2軌道は、中心軸が南極と北極を通っている。プレートテクトニクスの原因となる地下の球面らせん軌道は、2軌道が重なっているし中心軸がグアム島東あたりを通っている。


次は月平均でなく、ある日の低気圧や高気圧の分布そのものを見てみたい。これは2019年6月7日の500hPa北半球高層天気図だ。

農業温暖化ネット:梅雨寒のち猛暑(あぜみち気象散歩75)
500hPa高層天気図

「高気圧の軌道」と「低気圧の軌道」をシミュレーションするとこのようになる。個々の親球のポテンシャルを半径で示し、高気圧の親球列と低気圧の親球列とを別々に作図した。ほぼ原点対称な分布になっている。単日で見ると、個々の高気圧や低気圧は円で表せるようだ。

500hPaシミュレーション   500hPaシミュレーション

2軌道を高層天気図に描き入れてみた。そこそこに似ていると思われる。

500hPa高層天気図    500hPa高層天気図



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