(2022年6月追加)
●電子を階層球列モデルで描写する

電子を階層球列モデルで描写し、そのモデルでスピンをイメージ化してみたい。電子は子球と仮定する。

まず原子核と電子の関係を確認しておくことにする。原子核の周りを電子が回転するのは、親球表面軌道を子球が軌道自転しながら軌道公転することに相当する。電子軌道はs、p、d、fと4種類あり、その形は球面調和関数で表される。

ウイキペディア:球面調和関数
球面調和関数

この図は電子の軌道公転をイメージ化したものだ。座標原点(公転軌道の中心)に原子核が存在すると想像してほしい。ただし実際には公転軌道は平面ではなく球面らせん形なので注意していただきたい。

電子の公転

私が考えるところでは、球面調和関数で電子軌道が表示できる理由は次のようなものだ。「原子核が極座標の原点に置かれたと仮定する。極座標原点と反対の方向(R軸方向)に、電子からベクトルが出ている。電子が軌道自転しながら球面らせん形の親球表面軌道を軌道公転するのに伴って、このベクトルは規則的に伸縮する。」この状況説明に従うと、極座標の原点には小さな球形の空白領域が存在する。そこから外側へベクトルが伸びて球面調和関数を描いているとイメージすればよい。この場合球面調和関数は電子の存在(シュレディンガー方程式の角度方向の解)を意味する。実際に電子は原子核の中には存在しないから、原点に空白領域があるという仮定は不合理ではないはずだ。


しかし、電子の構造を理解するには、電子の軌道公転によるベクトルの変化ではなく、電子の軌道自転そのものを描写せねばならない。
電子は球形と思われる。電子を子球と仮定すると、その表面には球面らせん2軌道が存在する。その赤道方向の回転数はlと(l+1)の組み合わせであり、極方向の回転数はmと(−m)の組み合わせであると以前私は述べた。当時は5次元の回転まで想定したが、実際には4次元の回転を仮定すれば足りると思われる。この回転は2+1次元(実2次元虚1次元)の回転と思われる。lが意味する赤道方向の回転は実平面に、mが意味する極方向の回転は複素平面にあるとイメージすればよい。

電子の構造:電子は複素共役な球面調和関数の内積である

電子の場合、極方向の回転数mは、1か(−1)のどちらかだと仮定する。mの絶対値が2以上になると、軌道自転に伴って電子の極性が不規則に反転するからだ。電子表面2軌道の回転数(l,m)は、lが小さい順から(0,1)と(1,−1)、(1,1)と(2,−1)、(2,1)と(3,−1)、(3,1)と(4,−1)の組み合わせだとわかりやすく仮定する。このとき電子の表面2軌道をシミュレーションするとそれぞれ次のようになる。

電子モデル1   電子モデル2

電子モデル3   電子モデル4

各軌道の位相初期値を適切に選べば、電子表面2軌道は必ず電子の赤道で交差する。電子の赤道で2軌道が交差するのがなぜ重要かというと、交差することによって電子が交差点で内積の性質を持つようになるからだ。昇降演算子の性質から推測すると、電子は数学的に角運動量ベクトルのミンコフスキー内積で表すことができるのだった。ただの内積でなくミンコフスキー内積なのは、mで表される極方向の回転が複素平面での回転であるからだ。つまり、球面らせん形の電子表面2軌道は基本的に虚数空間に存在するが、電子の赤道だけは実次元に存在する。そして赤道に存在する2軌道交差点という1点だけで、2軌道が実次元に現れることになる。この2軌道の交差点を「電子の実3次元出現点」と呼んでもかまわないだろう。

電子の構造:高次元のポテンシャルを仮定する
電子モデル

この図でいえばv軸が虚軸、u軸とR軸が実軸だ。電子はuR平面で常に実次元に現れているが、uR平面以外では高次元にありわれわれには知覚できない。また、v軸は電子の中心軸(回転軸)と一致する。電子の中心軸の方向は、軌道公転の軌道方向と一致する。

正確に言えば、l=1以外の電子表面軌道には軌道と赤道との交差点が2点ある。しかし「片方の軌道の孫球」と「もう片方の軌道の孫球」はどちらか一方の軌道交差点でしか重ならないから、どちらかの交差点は内積としての性質を持たないと考える。なぜ重ならないかというと、各軌道の孫球の個数はlと(l+1)なので、互いの孫球がぴったり重なり合う地点は軌道上の1点だけだからだ。
l=1の電子表面軌道には軌道と赤道との交差点が1点しかない。このとき一本の軌道の「往路」と「復路」が赤道で重なるので、「往路」と「復路」の影響が重なってしまいそうに思える。しかしこのとき電子表面軌道には孫球がひとつしか存在せず、「往路」と「復路」のどちらかでしか相手軌道の孫球と重ならない。当然影響が重なることもない。

先ほど原子核の周りを回転する電子を球面調和関数で描写したが、「極座標の原点と反対の方向に、電子からベクトルが出ている」と私は仮定した。電子とは球面らせん形の表面軌道を孫球が軌道公転している存在だ。かなり複雑な構造をしているのに、なぜ一方向ベクトルという単純なモデルが適用できるのかと不思議に思った方もおられるかもしれない。電子から出るベクトルが実次元で観測できるのは電子の赤道面に限られ、しかも「電子の実3次元出現点」は一点だけだからと私は考えている。

電子表面2軌道が「電子の実3次元出現点」一点だけで交わることで生じるもう一つの重要な性質は、電子がデルタ関数の性質を持つことだ。デルタ関数とは、「ある一点において密度は無限大、しかしその密度を積分して全体量を求めると有限量」という不思議な性質を持つ関数だ。孫球は電子の赤道で実次元に現れるが、すぐにまた虚次元に消え去る。この性質を表すのにデルタ関数はふさわしいと思える。電子は質量も電荷量も確定している物質だが、大きさは存在しないと言われている。電子を実次元で確認できるのが「電子の実3次元出現点」だけであるとしたら、その性質も納得できる。

先の私の文章では、資料「ポアソンの公式(Poisson's formula)の導出」から次のような言葉を引用した。『(電荷の)「粒子の位置」に関する情報が「球表面上のポテンシャル」に関する情報に置き換わっていることにも注意』と。孫球列が球面上に存在することを簡潔に表している。今までの議論で、この球面が2+1次元にあることがおわかりと思う。

以前も文章で触れたことがあるが、球面調和関数の意味を「球表面上のポテンシャル」に関する情報として整理しておきたい。球面調和関数は、私のシミュレーションでは球面らせん軌道の各点の座標値にルジャンドル陪関数をかけるという操作で計算する。ルジャンドル陪関数とは、係数を別にすれば、添字lで記述されるルジャンドル多項式に添字mで記述される複素指数関数を掛けたような関数だ。添字lの式は普通の三角関数で記述されるが、添字mの式は複素指数関数e^±imφで記述される。添字lは実平面だが、添字mは複素平面であることを表している。総合すると2+1次元の球面を表していると思われる。

ウイキペディア:球面調和関数

ただし、添字mの複素指数関数をオイラーの公式で置き換えて実数成分だけを使えば、2+1球面でなく実3次元球面のポテンシャルにも応用できる。

ルジャンドル多項式は円周上の2点間の距離の逆数を表す。ウイキペディアのルジャンドル多項式のページの「多重極展開におけるルジャンドル多項式」の項でr=aと置けばそれがわかる。類推すると、ルジャンドル陪関数は2+1球面上(あるいは実3次元球面上)の2点間の距離の逆数を表すと思われる。

ウイキペディア:ルジャンドル多項式
電子モデル

つまり球面調和関数の計算とは、基本となるポテンシャル値を「2+1球面上」あるいは「実3次元球面上」の2点間の距離で割る操作だ。ポテンシャル値が距離に反比例することを示す。電子は2+1球面であるから、「(高次元に存在する)電子表面の任意の地点の孫球」が「電子の実3次元出現点」に与えるポテンシャル値を表すと思われる。


●電子のスピンについて考える

電子の構造はモデル化できたと思うので、次は電子のスピンをイメージ化してみたい。現代物理学ではスピン(角運動量)の数学的性質はわかっているが、イメージ化はされていない。量子力学では、「力を伝える粒子」ボソンと「物質を構成する粒子」フェルミオンとに素粒子を分類する。ボソンのスピンの最小単位は1で、フェルミオンのスピンの最小単位は1/2だ。電子はフェルミオンの一種である。

物理学では、スピンについて大まかに次のように言われている。電子軌道が電子の公転であるとしたら、スピンは電子の自転だ。また、電子軌道には軌道角運動量があり、スピンにはスピン角運動量がある。プランク定数を2πで割ったディラック定数をhで表すと、軌道角運動量はl(l+1)h^2で表され、スピン角運動量はs(s+1)h^2で表される。

ことバンク:スピン量子数

単純に考えてみたい。軌道角運動量とスピン角運動量は同じ形式の式で表されている。軌道角運動量が親球表面軌道上の回転であるとしたら、スピンは子球表面軌道上の回転ということになる。

フェルミオンのスピンは、数学的に「スピノル」というベクトルやテンソルに似た線形代数的な表現で記述される。スピノルは2成分の複素行列で表される。具体的には、スピノルが従う変換規則は複素指数関数e^iθ/2とe^-iθ/2を成分とする2行2列の対角行列になる。

EMANの物理学 :スピノル(イメージ重視)

スピノルの2成分であるe^iθ/2とe^-iθ/2の二つの複素指数関数は、それぞれ電子表面2軌道に対応していると思われる。複素指数関数e^iθ/2 とe^-iθ/2は、複素平面における円周上の順方向と逆方向の回転を数学的に意味する。回転角がθでなくθ/2なのは、2本の軌道の回転角を合計すると1本の軌道の回転角の2倍になるからだ。この式を見ると、電子のスピンは電子の極方向の回転に対応している。電子表面2軌道の極方向の回転は、複素平面上でmとーmの回転数を持っているのだった。


フェルミオンのスピンについては、数学的な考察から不思議な性質が明らかにされている。スピノルを1回転させたら符号が反転する。2回転させたらやっと符号が元に戻る。これが理解不能とされているのだが、私の電子モデルで考えると不思議でも何でもない。スピノルを1回転させるとは、電子を極方向に180度軌道自転させるという意味に過ぎない。180度×2軌道=360度(1回転)だからだ。このとき符号が反転したかどうかを知りたければ、電子表面2軌道をそれぞれ軌道公転する孫球の向きを想像すればいい。ただし、孫球の中心軸は常に公転軌道に沿うと仮定する。
実際に2軌道を図示してみた。左はl=3、右はl=4の軌道だ。電子の北極と南極とで、アルファベットl字型軌道の向きが反転しているかどうか調べてみてほしい。赤道方向の回転数lが奇数か偶数かによって結果が違う。lが奇数だとアルファベットl字型軌道の向きは反転しないが、lが偶数だとアルファベットl字型軌道の向きが反転する。したがって、lが奇数だと孫球の中心軸(符号)は反転しないが、lが偶数だと孫球の中心軸(符号)は反転する。

電子スピンモデル   電子スピンモデル

この状況で、「lが奇数の軌道」と「lが偶数の軌道」の孫球の中心軸の回転角を合計してみる。片方の軌道で孫球の中心軸が反転し、もう片方の軌道で孫球の中心軸がそのままの方向だったとすれば、2軌道の回転角の合計は180度になり符号が反転したことになる。電子表面2軌道の赤道方向の回転数はlと(l+1)だから、常にこの状況が起きている。

電子スピンモデル

正確に言うと、フェルミオンのスピン量子数は半整数、すなわち 1/2,3/2,5/2,……という数列になる。これは {l+(l+1)}/2 という数式にl=0,1,2,…という数列を代入したものだ。

以上でフェルミオンのスピンがイメージ化できたと思う。ついでに想像すると、ボソンとは球面らせん2軌道の回転数(l,m)が2軌道とも同じである素粒子ではなかろうか。2軌道はぴったりと重なることもある。


スピンについて延々と述べてきたが、一般にはスピンが「自転」のようなようなものだという解釈は間違いとされている。その理由は「スピンは古典極限 h→0において消滅する為、スピンの概念に対し、「自転」をはじめとした古典的な解釈を付け加えるのは全くの無意味」だかららしい。

ウイキペディア:スピン角運動量

私にはこの「古典極限」の意味がよくわからないのだが、単に系が3+1次元ではなく実3次元であることを意味するのではなかろうか。たとえば、電子は2+1次元で自転している。したがって赤道方向の自転と極方向の自転の両方が存在する。赤道方向の自転は実平面上の回転だが、極方向の自転は複素平面上の回転だ。「古典極限」を適用したら、そもそも電子の複素平面での自転がなくなり、電荷もなくなってしまうのではなかろうか。スピンが消失すると同時に電荷も消え失せる。そのような存在をもはや電子とは呼べまい。「古典極限」を適用するという操作を、4次元の系に無条件に行うことは許されない気がする。


最後にいつものように付け加えておくが、私は学者ではないし、電子の構造やスピンについて新しい数式を発見したわけでもない。電子を図形として解釈するとこうなるのではないかと述べただけだ。物理的に電子の構造を確認してくれる人が現れるのを期待したい。



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