「太陽は磁場とプラズマで構成されている」と言われるほど、太陽において磁場は重要な役割を果たしている。では太陽磁場はいったいどのように形成されるのだろうか。太陽物理学では、太陽内部の対流層の導電性プラズマの挙動が太陽磁場を生むというダイナモ理論が提唱されている。けれども、現在にいたるもこの理論はあまり進展していない。
階層球列のモデルでは、太陽表面軌道に親球列が存在する。太陽表面の磁場は、太陽表面軌道に存在する親球列の磁場の総和であると考える。同時に個々の親球の磁場は、親球表面軌道に存在する子球列の磁場の総和であると考える。太陽磁場は多数の子球磁場が寄り集まって形成されていることになる。個々の子球の磁場は親球表面での位置や時刻によって規則的に変化する。また、個々の親球の太陽表面での位置は時刻によって規則的に変化するから、結局太陽磁場の分布も規則的に時間変化することになる。
同様に、個々の子球の磁場は子球表面軌道に存在する孫球列の磁場の総和であるとも言え、さらに孫球表面軌道にはひ孫球列が存在すると思われる。この連鎖がどこまで続くかは定かでない。しかしきりがないので、とりあえず「太陽磁場は多数の子球磁場が寄り集まって形成されている」と下限を設けて考えることにする。
この図は外部から観測される太陽磁場を平面図で図示したものだ。南極と北極の磁場が強い極小期の磁場分布を表している。太陽表面軌道に親球列が分布し、同時に親球表面軌道に子球列が分布すると仮定している。正の磁場を赤、負の磁場を青で表す。太陽の座標系の縦軸は太陽の自転軸とする。親球の座標系の縦軸は親球の自転軸とする。本当は親球の自転軸(中心軸)は常に太陽表面に対し直立しているが、この図はそれと異なり、親球の自転軸が太陽の自転軸と一致するように描いている。太陽の外側から観測される親球の磁場は、親球の北極周辺の磁場であると考えてほしい。
この図は子球の磁場がどのように太陽磁場に反映されるかを大雑把に示している。
ご覧の通りこの図では子球は単極磁場を持つかのごとく作図している。本当は子球の磁場は親球よりも幅が狭い双極磁場であるはずだが、わかりやすさを優先して作図した。磁場の大元は子球で、子球列の磁場によって親球の磁場ができ、親球列の磁場によって太陽磁場ができるという順番になっている。
まず基本的な磁場の仕組みを確認してほしい。太陽の北極と南極では極性が逆転している。太陽表面の各地点の磁場は、そこに存在する親球の北極磁場、および親球北極の子球の磁場の極性に大まかに等しいことがおわかりと思う。太陽表面軌道の磁場も親球表面軌道の磁場も1波長の正弦波状に分布している。
この図は平面図だが、実際には太陽表面軌道は球面らせんだ。中低緯度では「北極から南極への軌道」と「南極から北極への軌道」が交差することもある。そのため中低緯度では「北極から南極への軌道の磁場」と「南極から北極への軌道の磁場」が打ち消し合って見かけの磁場が小さくなることがある。極小期にはこの磁場の打ち消し合いはほとんど起きないが、極大期には磁場が打ち消し合って存在しないかのように見えることさえある。実際にどの程度打ち消し合うかは、太陽表面2軌道の配置にもよる。軌道と軌道の間の距離が離れていると互いの磁場が打ち消し合わず外部に漏れることもある。極大期にはこの磁場が観測される。
なお、「北極から南極への軌道の磁場」と「南極から北極への軌道の磁場」の打ち消し合いは、同じ原理で太陽だけでなく親球でも起こる。
太陽磁場の極性は約11年で反転し、約22年で元の極性に戻る。その理由は親球の磁場が約11年ごとに反転することで、突き詰めるとその理由はその地点の子球の磁場が約11年ごとに反転することだ。極性変化の1周期に当たる約22年間の表示図で太陽磁場の経時変化を確認してほしい。