(2024年11月追加)
●ヨガの原理 オーラとチャクラは階層球列モデルの典型
前回、カイロウドウケツというカイメンの骨格生成の原理が階層球列モデルで説明できると私は書いた。カイロウドウケツの本体は、目に見えるが生命のない骨格ではなく、目に見えないらせん磁気を作り出す能力であるとも書いた。だが、らせん磁気などというものが本当に存在するのかと疑問に思われた方もいたと思う。しかし、らせん磁気は珍しいものではなく、人間にも存在する。人間の頭部にはらせんを描く磁場が存在することがわかっている。人間の脳の電気活動は、脳波と同時に頭の周りに磁場を誘起させているのだ。
In Deep:病気ってなんだろな? ちょっと整理してみます
それだけではない。アメリカの心臓専門の研究機関ハートマス研究所によると、人間の心臓には、脳の60倍もの強さの磁場が存在するそうだ。また、心臓の発する磁場成分の強さは脳が発する磁場成分の5000倍もあり、細胞組織に邪魔されることなく、1〜2m離れた場所でも計測が可能だという。人の電磁場は人体の外にまで広がっているのだ。
意識的に他人とコミュニケーションを取っていないときでも、心臓が作り出す電磁信号が周りの人々の脳波に感受される。潜在意識下で、かすかではあるものの、しっかりとした影響力のある電磁波やエネルギーコミュニケーションのシステムが作動するとハートマス研究所は結論づけている。共感的な相互作用の中で、生理学的反応が他人の反応と同期するというのだ。
HeartMath Institute:The Energetic Heart
上の文章を読んで、オーラという単語を連想した人もいるのではなかろうか。現代日本では人間の存在感や風格がある様子を指して「オーラがある」と表現することがある。だが、オーラの本来の意味は少し違う。オーラとは、生体が発散するとされる霊的な放射体、エネルギーを意味する。生体から層をなして発散される電磁粒子の層であり、生命エネルギーであるとする疑似科学的な見解もある。現代では、オーラとは物体から発散され、それを取り囲むエネルギー場であると考えている人が多い。
ウイキペディア:オーラ
ハートマス研究所が述べる心臓磁場の性質は、オーラのこれらの性質と一致している。
ハートマス研究所が作成した図を見ると、人間の心臓が発生させる磁場はトーラス状になっている。階層球列モデルの「4次元超球面の3次元断面」に似ている。ひょっとして、人間の脳や心臓が生み出す磁場も階層球列モデルで描画できるのではなかろうか。参考になる資料があれば、もっと詳細な図を描けそうだ。
そこで思い浮かぶのが、アメリカの著名なヒーラーであるバーバラ・ブレナンのオーラ図とチャクラ図だ。ブレナンは大気物理学の修士号を持ち、NASAに勤務した科学者でもある。また、彼女は米国国立衛生研究所の「エネルギー構造療法」委員会の副委員長も務めた。優れた霊視能力で描いたオーラ図とチャクラ図は、ヒーラーの古典となっている。
チャクラという言葉が出てきた。チャクラは古代インド発祥のヨガの用語で、人体の頭部、胸部、腹部などにあるとされるエネルギー中枢を指す言葉だ。ヨガの知識体系では、宇宙生命力としてのプラーナが人体のナディー(脈管)を循環し、チャクラに集約されると考えられている。目に見えない二本のナディーが人間の身体の中央を上下に貫いている。二本のナディーの片方は右回り、片方は左回りで、互いにらせん状にからまっているとされる。二本のナディーが交わる位置にチャクラが存在すると考えられることもある。ただし、ヨガの知識体系には異説も多い。それぞれの行者が実践で得た個人的な体験を、体験してない学者が自分の見方で分類しているからだろう。
もう一つ私が描画の参考にしたのは、人間の背骨がわずかに湾曲していることだ。ヨガにはクンダリニーという用語があり、生命エネルギーを意味する。クンダリニーが覚醒すると、尾てい骨のあたりのチャクラから頭頂のチャクラまで、エネルギーが脊髄を上っていくと言われる。エネルギーが脊髄を上っていくとしたら、背骨の形とナディーの形は似ているはずだ。
以上の情報を総合して、人間のオーラとチャクラを階層球列モデルで描画してみたい。
まず、オーラ全体の形はハートマス研究所が描いた通りトーラス状とする。右回りと左回りに対応する赤と桃色の2本の軌道が、「4次元超球面の3次元断面」の形のらせんを描き、トーラスを形成していると仮定する。左に正面図、右に側面図を並置する。
このトーラスの中央に人の体が位置する。
前後で対になったチャクラは、「4次元超球面の3次元断面」のトーラスの内管と仮定して描画する。「4次元超球面の3次元断面」は、穴が限りなく小さいドーナツの形をしている。描画の画素となる点を減らし、中心軸を横にして斜めから見るとこんな感じになる。トーラス中心部で線の密度が高く、周辺部で線の密度が低い。そのため、中央付近の内管は明るくらせん状の実線で、周辺部は暗く点線で描画される。
中心軸方向から見た図と真横から見た図はこのようになる。中心軸方向から見ると放射状だ。階層球列モデルでは中心角が決定的に重要なことを表している。
ブレナンのチャクラ図では、人間のチャクラは体の前と後ろで対になって5組ある。これに従ってトーラスの中央に5組のチャクラ対、言い換えれば5組の「4次元超球面の3次元断面」のトーラスの内管を配置する。
拡大するとこうなる。5組のチャクラは真横から見ると上下にほぼ等間隔に位置している。
低密度の周辺部を含めて見ると、チャクラは人体の外部まで広がっている。これがオーラだ。オーラは卵状に人体を包んでいる。
ブレナンのチャクラ図では頭頂と会陰のチャクラはそれぞれ上と下を向いている。このふたつのチャクラは子球ではなく、トーラス状の親球の中央にある内管が広がる様子を表すと私は考える。「4次元超球面の3次元断面」の内管は、トーラスの中心部では非常に細く直線状に見える。だが中心部から離れると、頭頂と会陰のあたりで急激にラッパ状に広がる。
ヨガの知識体系でも頭頂と会陰のチャクラはほかのチャクラと性質が違う。頭頂のチャクラは、額のチャクラから続くナディーが迂回したり切り離されたりした図像で描かれることが多い。他の6チャクラとは異なり身体次元を超越していると考えられることもある。
普通ヨガの知識体系では、ナディーは2本でなく3本あるとされている。右回りと左回りのらせんの中心に、直線状のナディーが存在するとされる。これはおそらく親球のトーラス中心軸を指すか、上下に離れて存在する5個のチャクラが一本の直線軌道上にあると仮想したものだ。親球の内管はトーラス中心部で非常に細くなっているので、その付近では親球の中心軸と親球の内管とを同一視できる。
ヨガにはクンダリニーの覚醒という概念があり、修行が進むとエネルギーがチャクラをひとつずつ下から上へ上がっていくとされる。だが、実際はエネルギーが直線状の経路を通るわけではないだろう。下のチャクラから順番にエネルギーが強くなっていくだけだと思う。下のチャクラから順に、磁気リコネクションの条件が整うのかもしれない。聡明な読者は、5個のチャクラが存在する場所がすべて赤と桃色の軌道の交点であることに気がついていると思う。赤軌道の子球と桃色軌道の子球とがぴったり重なると磁気リコネクションが起きるのだろう。
横から見ると5個のチャクラはおおむね背骨の湾曲に沿っている。長時間自然に二足直立できる動物は人間だけで、猿には無理だそうだ。その理由は人間を包むトーラス状のオーラの中心軸が鉛直だからではなかろうか。
ヨガの概念では、聖者になるとオーラが拡大し、人体から大きくはみ出すようになる。これは個々のチャクラが大きくなることに対応する。階層球列モデルの球体には、エネルギーが高くなると励起して半径が大きくなるという性質がある。小さなチャクラと大きなチャクラが重なって存在するとこのように見える。
基底チャクラのみ
基底チャクラ + 励起チャクラ1
基底チャクラ + 励起チャクラ1 + 励起チャクラ2
ブレナンはオーラが7重に重なっていると霊視した。個々のチャクラが7段階に励起して重なっているのだろう。その6番目の「天空界ボディ」は右図のように見えるらしい。
チャクラという言葉はサンスクリット語で円、円盤、車輪、轆轤(ろくろ)を意味する。また、クンダリニーという言葉はサンスクリット語で「螺旋を有するもの」を意味し、「螺旋」「コイル」「巻き毛」「環」などを意味する単語から派生している。両方とも回転に関わる言葉だ。人体から発する磁場がらせんを描いていることを、昔のインド人は知っていたのかもしれない。
余談だが、ヨガではチャクラをハスの花にたとえることがある。階層球列モデルで描くとハスの花はこんな感じだ。花全体が親球で、その表面軌道に子球である花びらが並ぶ。花びらは平らと仮定して描画している。軌道上の花びらと花びらとの間の角度は黄金角(約137度)になっている。一部の植物の葉序(葉の付き方)と同じだ。また、ハスの花の中央には半球状の花托があり、それを雄しべが取り囲んでいる。階層球列モデルで描いたこの図では、花托と雄しべの中央は親球の頭頂部と位置が一致している。
擬似的に花びらに厚みを加えてみる。「4次元超球面の3次元断面」を半分に切った図形をつけ加えた。ただし厚みは計算値の二分の一にした。なお、この写真のハスの花は、なんらかの理由で奥側の花びらが一枚欠けているようだ。本来は右図のような姿ではなかろうか。
ハスは発熱植物の一種でもある。開花前日から約3日間、花の中心にある花托が30‐35℃を維持して発熱する。エネルギーが発生するのだから、クンダリニーのようなものだ。親球の頭頂部で反応が起きるという、階層球列モデルの「磁気リコネクション」に似ている気がする。
人体の磁場が機械で測定可能なのは不思議なことではない。現代医療ではMRI検査はありふれた技術だ。これは磁気共鳴画像法という意味で、人体から磁場の情報を取り出して画像化する仕組みだ。また、脳の電気的な活動によって生じる磁場を、超伝導量子干渉計と呼ばれる高感度デバイスで計測する脳磁図という測定法もある。その他にもいろいろな技術がある。東洋医学の考えを取り入れたメタトロンのような医療機器も磁場を測定しており、日本でもかなり普及している。東京大と米カリフォルニア工科大などの共同研究チームは、人間にも渡り鳥のように地磁気を感じる能力があることを2019年に発見した。オーラやチャクラは磁場そのものではないだろうが、人類は不思議な「生体磁場」の解明に着実に近づいているようだ。
●階層球列モデルは人間社会にもうまく適用できる
対象の外観を数式で描画するという理系の話から離れ、ここからは文系の話をしたい。階層球列モデルは、人体を取り囲むオーラだけでなく、人間が営む社会システムにも申し分なく適用できる。
階層球列モデルを社会システムに適用すると聞くと、階層制や階級制(ヒエラルキー)を連想する人が多いと思う。ヒエラルキーとは主にピラミッド型の段階的組織構造を指す言葉だ。ヒエラルキーの秩序や組織は地位・身分が上下階層式に整えられ、ピラミッド型階級によって成り立つ。指揮命令系統が一つしか存在しないため、支配層が組織の統制をとりやすい。その反面全体的労働によって得た生産物が全体に配分されず、一部の人間によって私有化されることがあるとマルクス主義では指摘される。他者の労働で得たものを私有化する側の階級と、私有化される側の階級が生まれるというのだ。
しかし、階層球列モデルに出てくる「階層」は、マルクス主義的な階級とはかなり性質が違う。少なくとも、階級の固定化とは対極の思想である。私が思うに、ざっと次のような特徴がある。
@同じ階層の成員は基本的に平等だが、ある時点で見るとポテンシャルがそれぞれ違う。短期的には、個々の成員の地位や性質はかなり違う。親球表面軌道に並ぶ子球のポテンシャルの違いを色で表してみた。
A同じ階層の成員のポテンシャルは時間的に変化する。以前ポテンシャルが高かった者は低くなり、低かった者は高くなる。長い目で見ると、「回り持ち」になる。時間による変化は必然で避けられない。
B同じ階層の高ポテンシャルの場所は時間がたつと移動する。つまり、繁栄の中心が移り変わる。時間による変化は必然で避けられない。
C同じ階層の個々の成員のポテンシャルはそれぞれ異なる。しかし、違う成員が集まってこそ全体ができるとすべての成員が理解している。
D同じ階層の成員はなんらかの共通点を持ち、秩序を持って並ぶ。同じ階層の多数の成員が集まった状態(組織)は、ひとつ上の階層とみなせる。いくつかの組織が横並びに集まると、もうひとつ上の階層と見なせる。集まった組織はそれぞれにポテンシャルが異なっているが、それが多様性というものだ。
この社会システム論をいかが思われるだろうか。時間とともに組織が変化することを最初から前提としている。われわれ日本人にとっては、少しも違和感のない思想だと私は思う。
平家物語の冒頭に曰く「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」
方丈記の冒頭に曰く「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」
日本の文学史や思想史をひもとけば、これに類する言葉はいくらでも見つかるだろう。西洋にも古代ギリシャの昔から「万物は流転する」と説く哲学者がいた。東洋でも仏教の思想はこれに近い。
ただし、日本人が勘違いしやすいのは、諸行無常を否定的にとらえてしまうことだろう。栄華を極めた権力者が零落するさまを想像してしまう。だが、「盛者必衰の理」は本当は悲しむべきものではない。階層球列モデルによれば、次の世代の萌芽が必ず約束されている。衰える者がいれば、別の場所には立ち上がる者がいる。硬直した体制を作り直し、新しい価値観と社会システムを興隆させる。全体にとってみれば、「盛者必衰の理」はむしろ吉兆なのだ。破壊と創造は対になって現れる。ひとつ上の階層から見れば、それは進歩とさえ呼べるかもしれない。
また、階層球列モデルは、人間の社会システムだけでなく自然界の理そのものも表していると私は思う。春夏秋冬は必ず巡り来る。あらゆる生物は睡眠と覚醒を繰り返し日々の暮らしを営んでいる。生きとし生けるものは、誰も生老病死を拒むことはできない。星や銀河にも寿命はあるだろう。この世の「二元性」とはこの仕組みから来るのではないだろうか。
●階層球列モデルは物理学の基本的な要請を満たす
付け足しになるが、階層球列モデルは物理学の基本的な要請も満たしている。
現代物理学は量子力学抜きでは語れない。量子力学の特徴は何かというと、あらゆる物理現象が粒子と波の二重性を持つことだ。人間の直観には反するが、光や電気さえ波の性質だけでなく粒子の性質を持っている。しかし、階層球列モデルではそれは当然のことだ。親球や子球は粒子だからひとつ、ふたつと数えることができる。しかし、子球は数が増えると親球表面軌道に列になって並ぶ。そして並んだ子球のポテンシャルは軌道上で波のように変化する。また、子球表面軌道には孫球が列になって並ぶ。並んだ孫球のポテンシャルは軌道上で波のように変化する。どの階層でもどこまでいってもこの関係が続く。したがって、すべての物理現象は波で構成されるとも言えるのだ。光の本質は粒子だ、いや光の本質は波だと口角泡を飛ばして互いに言いつのる必要などどこにもない。
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