強力な電波を発生するクエーサーという天体がある。準星と呼ばれることもある。活動銀河核(回転する銀河の中心)の一種とされていて、角運動量や磁場を持つと考えられている。宇宙ジェットを噴出することもある。
顕著な特徴として、クエーサーのスペクトルは大きな赤方偏移を持っている。赤方偏移は宇宙論の基礎となる現象だ。観測対象となる天体からの光や電波のスペクトルが長波長側(可視光で言うと赤に近い方)にずれる現象を指す。1920年代、アメリカの天文学者ハッブルは遠方の銀河の距離と赤方偏移の関係を調べた。すると赤方偏移の大きさは、地球からの距離に比例していることがわかった。そこで考えられたのが宇宙膨張説である。もしも宇宙が膨張していれば、光のドップラー効果によってこの状況を説明できる。地球からより遠い銀河は、より大きい速度で地球から遠ざかっていることにすればよいのだ。ビッグバン理論は宇宙膨張説を発展させた理論であるから、赤方偏移が宇宙の膨張を意味することは現在主流の宇宙論の大前提である。つまり赤方偏移の解釈は宇宙論の根幹に関わると言ってよい。
クエーサーの赤方偏移が大きいということは、光のドップラー効果から考えて極めて遠方にある天体だと判断される。だが、それほど遠方にあるにしてはクエーサーが放射する電波はあまりに強い。明るさが急激に変化することがあることから、クエーサーは小さな天体と予測されている。にもかかわらず、普通の銀河の100倍ものエネルギーを放射している計算になる。アメリカの天文学者ホルトン・アープは、クエーサーが近傍の天体と相互作用しているとしか思えない写真をいくつも撮影した。アープは、クエーサーは近距離にあり、活動銀河核から放出されたと述べている。そして赤方偏移は宇宙の膨張によるものではないという仮説を提出した。現在正統派宇宙論はいろいろな点で矛盾を抱えているが、赤方偏移の問題はその最たるものではないかと思う。
それでは赤方偏移理論の基礎となる光のドップラー効果とはどのようなものだろうか。その前にまず、音のドップラー効果について説明したい。例えば、救急車などが通り過ぎる際、近付くときにはサイレンの音が高く聞こえ、遠ざかる時には低く聞こえる。発生源が近付く場合には波の振動が詰められて周波数が高くなり、逆に遠ざかる場合は振動が伸ばされて低くなる。これが音のドップラー効果だ。
では次に光のドップラー効果について調べてみよう。ウィキペディアには次のような記述がある。
「(略)…光の伝播は特殊相対論に従うため、通常の波のドップラー効果とは違った現象を見せる」
ウィキペディア:ドップラー効果
なんと、特殊相対論が出てくるのか!ということは、光のドップラー効果はローレンツ変換に従うと述べていることと等しい。ローレンツ変換に従うということは、虚次元の回転であると述べているに等しい。
状況を最も単純な虚4次元球面でモデル化してみよう。
宇宙は虚4次元の構造を持つと仮定する。われわれ人間が存在するのは3次元平面(無理やりイメージしてください)であるとする。ただしこの3次元平面は虚4次元で見ると実は球面状に曲がっていて、地球はこの虚4次元球面上に存在している。この球面上にA地点を考える。A地点から、地球に向けて光が放たれると仮定する。光は虚4次元空間を直進する。虚4次元球面は湾曲しているので、最初球面と平行だった光は少しずつ球面から離れてゆく。球面と平行な方向への光速の成分は、光が長距離を伝播するにつれて少しずつ減少するだろう。地球で光を受け取った時には、A地点と地球との距離が遠ければ遠いほど、光は遅くなったように感じられる。結局光の周波数はローレンツ変換に従って変化することになるが、その値を具体的に決定するのは、光速cと虚4次元球の半径、それと虚4次元球の中心角である。
このモデルでは、赤方偏移を説明するために宇宙の膨張を仮定する必要はない。宇宙が虚4次元において球面状であるという仮定があればよい。
だがこの仮定だけでは、クエーサーが近傍にあることとその赤方偏移が大きいことの関係が説明できない。そこでもうひとつ仮定を付け加えたい。虚4次元空間には、いくつもの大小の虚4次元球面が重なって存在しうる。
赤方偏移は虚4次元球の半径と中心角から計算される値だった。仮に1種類の虚4次元球面しか存在しないとしよう。虚4次元球の半径は定数となるので、計算上問題にならなくなる。球面上の2地点間の距離で素直に中心角や赤方偏移が計算でき、遠くの銀河は大きな速度で後退すると仮定しても矛盾は起こらないだろう。では半径の小さい虚4次元球が同時に存在するとしたらどうなるか。2点間の距離から計算される中心角の値が違ってくるので、赤方偏移は別の値になる。クエーサーの例で言えば、クエーサーの存在する虚4次元球面と遠くの銀河の存在する虚4次元球面は別物だと考えればいいのだ。クエーサーの存在する虚4次元球面は半径が小さい。そうすれば、赤方偏移は大きいがクエーサーは近くの天体だと言えるようになる。
大小の虚4次元球面が重なって存在しうると仮定したが、これはありえない仮定だろうか?そうではあるまい。近年の観測は宇宙の階層性を如実に描き出している。銀河が集まって銀河団があり、銀河団が集まって超銀河団が存在する。一つの銀河は、大きさが異なる3種類の銀河システムに同時に属していることになる。また、宇宙の膜構造あるいは泡構造は、膜のように銀河が密集した領域と何もないボイド領域が宇宙には交互に存在することを明らかにしている。半径の異なる球面が多数重なっているとき、断面を見れば膜宇宙のように見えるのではないか。
クエーサーについてもう一つ重要な事実を挙げておこう。クエーサーは、重力レンズ効果を実測した天体であることだ。重力レンズ効果は、一般相対性理論の正当性を証明したとされる現象である。重い物体により歪められた時空を通ると、光は曲がる。対象物と観測者の間に大きい重力源があると、観測者に複数の経路を通った光が到達する場合がある。これにより同一の対象物が複数の像になって見える。その様子が光学レンズによる光の屈折と似ているので、重力レンズと呼ばれる。リング状に見えるものはアインシュタインリングと呼ぶ。
重力レンズ効果が一般相対性理論の正当性を証明した、ということはローレンツ変換の正当性を証明したということだろう。この現象は虚4次元で球面状になっている宇宙を経由してきた光を観測しているのではないか?虚4次元球面上では光は球面に沿って曲がる。光がクエーサーのある虚4次元球面を離れて地球に向かうとき、その方向はレンズを経由したように変わっているはずだ。
ところで、銀河団による重力レンズ効果を測定することで、銀河団自体の質量を測定することが物理的に可能であるとされている。ところがこの結果とX線測定による結果は明らかに差があるそうだ。銀河団周辺に分布するダークマターの質量が寄与していると考えられているという。逆に、その値によってダークマターの質量を測定できると考えているらしい。ご存知のように、ダークマターの正体が何なのかはまったくわかっていない。
どんどん妄想の領域に近づいていることを承知で宇宙の背景輻射について考えてみよう。仮に地球が虚4次元球面上にあるとする。球面上にある地球は、虚4次元球の中心からなんらかの影響を与えられているとする。この影響は観測可能だろうか?仮にそれが電磁波の形で観測可能だとしよう。するとその強さと方向性はどう観測されるだろうか。強さはともあれ、その方向性は全く知ることができないだろう。実次元では虚次元の方向を感知することはできないからだ。地球から見て全方向に均一な電磁波が観測されることになる。これはアメリカの物理学者ガモフがビッグバン理論の根拠とした宇宙のマイクロ波背景輻射と同じ状況ではないだろうか?
観測によれば、宇宙の背景輻射は完全に均一なわけではない。その偏差を光のドップラー効果で計算した結果、われわれの銀河系を含む局部銀河群は、光速の約0.2パーセントの速度で移動していると考えられている。この移動の原因が現代科学ではよくわかっていない。グレートアトラクターと呼ばれる巨大重力源に引き寄せられていると説明されるが、実際にグレートアトラクターに相当する天体がどこの何なのかについて、科学者の結論はまだ出ていない。また、われわれの銀河系の隣にあるボイド領域の中心から斥力が働くとの仮説も出されているようだ。が、根本原因は重力であるにもかかわらず、引力でなく斥力が働くという理屈はどうも苦しげに思える。
ウィキペディア:ローカル・ボイド
背景輻射の偏差の原因を、虚4次元における曲率に帰すことはできないだろうか?虚4次元球の中心からの作用の方向性を知ることはできない。が、球面上の他の天体からの作用の方向性は知ることができるはずだ。
あるいは、われわれの銀河系の運動方向に3成分があり、それぞれが直交しているらしいことに着目すべきなのだろうか?われわれの銀河系は、隣にあるボイド領域の中心から遠ざかっているらしい。これが本当なら、重要だ。その速度は半径r方向の成分に当たるのではないか。シュレディンガー方程式を極座標で変数分離して解いたように、銀河移動の速度成分をr方向やθ方向に分けられるのだろうか?
虚4次元という概念を使えば、このように宇宙論など先端物理のさまざまな領域でいくらでも仮説を立てることができる。およそどんな仮説でも立ててしまうことができそうな破壊力だ。歯止めが効かなくなってしまいそうだ。制御不能になってしまう前にそろそろ口をつぐむことにしたい。