●角度の成分が足りない?

 しかしここで不都合なことに気がつく。水素原子におけるシュレディンガー方程式は、3変数分離法と3方向の成分を仮定した上で変数分離して解いた。3つの変数を仮定したのには理由がある。この宇宙は3次元であると仮定したからだ。ところが、φが虚次元に対応する変数だとすると、3次元空間を表わす変数が一つ足りなくなる。これでは平面運動しか記述できなくなってしまう。だから変数を一つ追加せねばならない。この宇宙が虚4次元だとすると、虚4次元座標でシュレディンガー方程式を解く必要があるのだ。もう一つの実次元角度をαとし、

4変数分離法

と変数分離することにする。虚軸と実軸は直交しているから、4つの変数があるとすればこの仮定は当然だ。方程式の解は変数が増えた分だけややこしくなると一般的には推測される。だが、水素原子におけるシュレディンガー方程式の解は今までに見た3次元のもので特に不都合はないはずだ。なぜなら、3次元解の計算結果と物理的な実験結果は一致しているからだ。だがそうなると逆になぜ一致するのかという疑問が湧いてくる。実3次元の変数がひとつ増えたのに、その変数はめまぐるしく変化しているはずなのに、なぜ測定結果に現れないのか?

 推測されるのは、角度α方向の解はαに依存しないことだろう。言い換えればA(α)は定数ということだ。それならば測定結果は変化しない。結果的にαという変数は存在しないかのようにふるまう。数学的に、極座標において中心角に依存せず定数で表わされる図形が存在する。いったいどんな図形だろうか?円である。原点を中心とする円があるとする。原点からどの方向を見ても円は同じに見える。私のシミュレーションでは虚3次元球面上を虚次元粒子が公転していると仮定したが、実次元を1つ追加して虚4次元球面上を虚次元粒子が公転していると拡張すればいいわけだ。

 ところが、これではうまくいかないのである。なぜなら、水素原子におけるシュレディンガー方程式の解にはルジャンドル多項式が含まれているからだ。ルジャンドル多項式は平面もしくは虚3次元モデルにおいてのみ有効だ。虚4次元に拡張すると数学的に正しくなくなる。虚4次元の回転を考えるには、まず虚3次元の回転を仮定し、それを実次元で回転させるという手順を踏まねばならないように思える。つまり、電子は3次元に虚次元が加わって虚4次元になっているのではない。虚3次元が実回転し重なって虚4次元になっているように思われる。突拍子もない推論だと思うが、今までの仮定を踏まえればそうなる。宇宙全体がこの構造を持つかどうかは私の知るところではない。



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