ところで、虚4次元回転が電流を生み出すという考え方はそれほど突飛なものなのだろうか。
電磁気理論は19世紀にマクスウェルにより作られた。だが、近代物理学の流れの中で、それと同じ意味を持つ方程式が半ば偶然に導かれたことがある。昨今話題になった超ひも理論の基礎となったカルツァ・クライン理論だ。1920年代、理論物理学者のカルツァとクラインはアインシュタインの一般相対性理論に余剰次元を追加し、5次元以上の時空を記述できるよう拡張した。すると驚いたことに、4次元に対応する次元に電磁気力に相当する力が現われたのだ。電磁気力が、4次元という時空構造と密接に関係することが示されたのだ。この理論によると、4次元に現われる重力と電磁力は、5次元の重力に統合される。
余剰次元という言葉が出てきた。現代物理学の最先端を行くと言われる超ひも理論では、ごく普通に余剰次元を仮定している。至る所宇宙はこの微小な次元に満ちているのだそうだ。この次元は非常に小さいので人間には感知できないのだという。余剰次元は6次元あるのではないかと、現在も理論的探求が続けられている。つまり宇宙は全部で10次元もあるとされているのだ。私にとって興味深いのは、この余剰次元はたとえ1次元だとしてもただの直線ではないことだ。直線が丸まって円周状の形状をしているのだ。虚4次元回転の軌跡を連想させる。
カルツァ・クライン理論は、この宇宙は実際には虚4次元というより虚5次元以上の構造を持っていることを予想させる。だが、虚4次元さえほとんど理解できない現状で5次元を語るのはほとんど空想の世界である。焦らず地道に虚4次元の考察を続けよう。