●電流とは何か

 それでは、電流とはいったいどのようなものだろうか。科学的には、電流とは電子の移動であるとされている。しかし、導線内の電子の移動速度を計算してみると、毎秒1ミリに満たないという結果が得られる。ご存知のように実際の電流の「先端」はほぼ光速で伝わる。この説明は成功しているとは言えない。
 電流とは、導線を虚次元の回転が伝わる現象だろう。電磁波の一種とみなせるから、光速で伝わるのはあたりまえだ。もう一度コーシーの積分公式を思い出していただきたい。電流が複素平面において一定の速度で自転している成分を含むとする。すると、自転した回数に比例してポケットの財布から現金が湧き出てくる。つまり電圧が発生するのだ。電流の位相が時間的に変化しないのが直流電流、変化するのが交流電流だろう。

●交流電流のフェーザ表示

 もうひとつ、極めつけに複素回転そのものの性質を利用した工学的技法があるので紹介しておこう。電気工学の分野にフェーザ表示という技法がある。交流電気回路において、正弦波信号をオイラーの公式で置き換えて回路の解析を行なうものだ。三角関数の微積分を複素指数関数の微積分で代用できるので、計算が簡単になる。まさしく電流は虚次元の回転であると仮定して計算していることになる。しかし工学的には、これも単なる計算手法であり特別な意味はないと考えられているようだ。

●交流電流の共振

 交流電流を考える。導線の方向に位相が少しずつずれながら複素回転している状態だ。複素インピーダンスを考えよう。複素インピーダンスとは直流電流の抵抗の概念を複素数に拡張したものだ。フェーザ表示における電圧と電流の比で表わされる。
 コンデンサーとコイルの共振回路を考える。コンデンサーやコイルの容量を適切に選んでやると、この電気回路は共振しエネルギーの損失がゼロになる。これは一種の共鳴状態だ。共振回路は、コンデンサーとコイルの複素インピーダンスの和がゼロであるときにできる。おもしろいことに、複素平面座標で回転を表示すると、コンデンサーとコイルは回転の方向が逆になる。プラスとマイナスの複素回転の和がゼロであるように条件設定すれば、エネルギー損失をゼロにできることを意味する。この概念は今後重要となるだろう。



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