以上の予備知識をもとに、バシャールのフラクタルアンテナについて考える。これは2009年に出版された「バシャール×坂本政道」という本で解説されているものだ。ヘミシンクで有名な坂本政道が、チャネラーのダリル・アンカを通して宇宙人バシャールから教えられたものである。坂本はもともと理系の技術者なので、技術的な質問をあれこれとしており、フラクタルアンテナの構造もかなり詳細に明らかにしている。要約すれば、「形状をピラミッド型にして、表面を三角形のフラクタル模様の導体で覆う。内部中央の下から3分の1の高さに、電磁エネルギーから電気への変換室を設ける。」装置はたったこれだけである。このフラクタルアンテナを南北を合わせて設置すれば、電気が発生するという。なお、フラクタルアンテナ自体は一般的な技術で、携帯電話にも普通に使われているらしい。三角形ではなく四角形のフラクタルが使用されているそうだ。
このピラミッド型フラクタルアンテナが利用するのは、バシャールの言葉を借りれば、「宇宙空間にあまねく存在しているエネルギー」である。それを電気エネルギーに変換するらしい。このフラクタルアンテナは「電磁エネルギーのレンズ」である。また、「低次アストラル界の周波数をも受信」し「高次のエネルギーを低次の周波数に変換」「それにより高次のエネルギーを物質的なレベルで利用することができる」とバシャールは語っている。「低次アストラル界」とは意味不明の言葉だが、単純にある周波数帯の超高周波電磁波と理解しておく。ここでバシャールが多重共鳴について語っていることは明白であろう。
問題となるのは、ここで語られている「低次アストラル界の周波数」が具体的に何ヘルツ帯に相当するかという点だろう。フラクタル模様は、数学的には無限に細密化が可能である。細密化すればするほど、短波長すなわち高周期の電磁エネルギーを捕捉できることが予想される。どこまで細密化したフラクタル模様を作ればアンテナとして実用に足るのかは不明だ。バシャールもそこまでは教えてくれない。このアンテナの製作には精密加工の技術が必要だと覚悟すべきである。だが、精密加工技術は進歩している。金属メッキ技術、金属薄膜技術、あるいは最近話題の3Dプリンターなどいろいろな方法が考えられる。
このフラクタルアンテナは太陽電池と性格が似ている。自然エネルギーを利用している点で同じだ。太陽電池で得られるエネルギー量は、受光素子の性能と面積に比例する。同様にバシャールのフラクタルアンテナで得られるエネルギー量は、対象波長領域に対応するフラクタル模様の密度とピラミッドの表面積に比例するはずだ。バシャールは、もしこのフラクタルアンテナを何人かで使用するならふつうの家くらいの大きさが必要だと語っている。かなり大きなスペースが必要なわけだ。それを補うために、外部からピラミッドに電磁的振動を照射してエネルギーを増幅させる方法があるともバシャールは語っている。だが、それには別の方向から周波数の異なる波を照射するなどの条件があるらしい。別の物理理論が必要とされる。現段階では期待しないほうが無難だ。
ひとつ指摘しておきたいのは、バシャールがこのアンテナを実験により実現可能な技術として語っていることだ。そもそもバシャールがこのフラクタルアンテナの技術を日本人である坂本に伝えたのは、阪大・信大グループの研究を知っていたからだと思われる。この研究を発展させれば製作可能だと考えていればこそだろう。その程度にはバシャールの善意と合理主義を信じていいような気がする。多重共鳴関連の基本特許は阪大・信大グループが持っている。フラクタルアンテナは多重共鳴原理を元にした技術だから、阪大・信大グループが基本特許を主張できる可能性がある。ある意味これは日本人に与えられたチャンスだ。バシャールは、どこかの巨大資本がこのフリーエネルギー技術を隠蔽してしまうようなことにならないよう願っているのではないか。この技術を独占することなく、公平に全人類が使用可能な方向で研究開発を進めるのが日本人の努めであろう。
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